多発性骨髄腫と診断された方、M蛋白や免疫グロブリンの異常を指摘された方、今後の治療について相談したい方へ。
検査で病気の状態を確かめ、治療を始める時期や方法を一緒に考えます。
治療中の体調や生活の変化にも目を向けながら、患者さんとご家族を支えます。
このページのご案内
多発性骨髄腫とは
多発性骨髄腫は、免疫に関わる抗体をつくる「形質細胞」が、骨髄の中でがん化して増える病気です。
骨髄は骨の内部にあり、赤血球・白血球・血小板をつくる場所でもあります。
骨髄腫の細胞が増えると、正常な血液づくりや骨の状態などに影響が生じます。[1]
骨髄腫の細胞がつくる異常な抗体の成分を「M蛋白」といいます。
抗体の一部である「遊離軽鎖」が増え、腎臓に負担をかける場合もあります。
病気の現れ方には違いがあり、M蛋白の量だけでなく、血球数、腎機能、骨の状態などを合わせて病状を確認します。[1]
気づくきっかけ・症状
次のような症状や検査の異常をきっかけに、骨髄腫が見つかることがあります。[1]
- 骨の痛み・骨折:背中、腰、肋骨などが痛む、軽いきっかけで骨折する。
- 貧血:疲れやすい、だるい、動くと息切れがする。
- 腎機能の低下:血液・尿検査で腎臓の異常を指摘される。
- 血液中のカルシウムの上昇:血液検査でカルシウムが高いことを指摘される。
- 感染症:感染症を繰り返すなど、免疫の働きの低下がきっかけになる。
一方、症状が乏しいまま、健康診断やほかの病気の検査で、たんぱく質や免疫グロブリンの異常を指摘される方もいます。
これらの症状や異常だけで骨髄腫と決まるわけではなく、必要な検査を組み合わせて原因を調べます。[1]
診断と病状を確かめる検査
血液・尿検査
血球数、腎機能、カルシウムなどに加え、M蛋白や免疫グロブリン、遊離軽鎖を調べます。
血液中の変化だけでなく、尿に出るたんぱく質も確認し、病気が体に及ぼす影響を評価します。[2]
骨髄検査
骨髄から細胞や組織を採り、形質細胞の割合や性質を調べます。
必要に応じて、骨髄腫の細胞の染色体なども詳しく調べ、治療計画や病気の見通しを考える材料にします。[2]
画像検査
CT、MRI、必要に応じたPET/CTなどで、骨の病変や骨髄の状態などを確認します。
検査の組み合わせは病状や目的によって異なります。
診断後は、病期や病気の特徴、臓器の状態などを総合して、治療方針をご説明します。[2]
M蛋白と、治療を始める時期
M蛋白が見つかっただけで、すぐに骨髄腫の治療が必要になるわけではありません。
MGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)や、くすぶり型骨髄腫など、定期的に検査をしながら経過をみる状態もあります。
これらは、M蛋白の量、骨髄の形質細胞、臓器への影響などから区別します。[3]
治療を始めるかは、貧血・腎機能の低下・骨病変・高カルシウム血症などの有無を確認して判断します。
また、症状がなくても、骨髄や遊離軽鎖、MRIなどの一定の所見から、治療が必要と判断する場合があります。
症状の強さだけで決めず、検査結果と進行のリスクを踏まえて相談します。[3]
くすぶり型骨髄腫でも進行のリスクは一人ひとり異なります。
経過観察の間隔や、治療・治験を含む選択肢を検討するかについては、専門医と相談して方針を決めます。[4]
初めての治療と継続・維持療法
働きの異なる薬を組み合わせる
初めて治療を行う場合は、抗体薬、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、副腎皮質ステロイドなど、働きの異なる薬を組み合わせます。
年齢だけでなく、体力、腎機能やほかの病気、日常生活の状況、ご本人の希望を踏まえて、薬や治療の強さを選びます。[2][4]
自家造血幹細胞移植を検討する場合
全身状態などから適応がある方では、薬物療法に続いて自家造血幹細胞移植を検討します。
ご自身の造血幹細胞をあらかじめ採取し、大量の抗がん薬による治療の後に戻して、血液をつくる働きの回復を支える方法です。
すべての方に必要な治療ではなく、期待できることと体への負担を比べて相談します。[2]
効果を保つ治療と、定期的な評価
病気が落ち着いた後も、効果を保ち再発を遅らせるための継続治療・維持療法を行うことがあります。
どの治療を続けるかは、これまでの治療、病気の特徴、効果や副作用などを踏まえて検討します。[2][4]
治療中はM蛋白や遊離軽鎖だけでなく、血球数、臓器の働き、症状などを確認します。
検査値の変化や副作用を共有し、必要に応じて薬の量や間隔を調整しながら進めます。[2]
当科では薬物療法や、適応に応じた自家造血幹細胞移植を行い、外来・入院で継続して診療します。
治療内容と通院の見通しをご説明し、生活の状況も伺いながら計画を考えます。[5]
再発時の治療・CAR-T療法の治験
再発した場合や、これまでの治療で十分な効果が得られなくなった場合も、次の治療を検討します。
以前に用いた薬、その効果が続いた期間、副作用、腎機能や感染症などを振り返り、薬の組み合わせや治療方法を選び直します。[4]
免疫細胞の働きを利用する二重特異性抗体やCAR-T療法なども、病状に応じて検討される治療です。
実際に選べる治療は、これまでの治療歴、薬ごとの適応や利用できる条件によって異なります。[4]
当院では、多発性骨髄腫を対象としたCAR-T療法の治験にも取り組んでいます。
治験は通常診療とは異なり、参加は病状や治療歴、試験ごとの参加条件、募集状況を確認して検討します。
患者さん・ご家族は、まず現在の主治医を通じてご相談ください。[6]
骨・腎臓・感染症と暮らしの支援
骨の痛みと、動きやすさを支える
骨の痛みや骨折は、移動・家事・睡眠にも影響します。
骨髄腫そのものの治療に加え、骨を守る薬や痛みを和らげる治療などを、病状に応じて検討します。
どの程度動いてよいか、転倒を避けるために何を工夫するかもご相談ください。[1][4]
腎臓の働きに合わせた治療
腎機能は、薬の選び方や量を考えるうえでも大切です。
検査で変化を確認し、脱水や日常の薬にも目を向けます。
飲水や食事、市販薬・サプリメントの使用については、ご自身の体の状態に合った方法を診療チームと相談しましょう。[1][4]
感染症への備えと、体調が変わったとき
骨髄腫や治療の影響で、感染症にかかりやすくなることがあります。
予防接種や予防のための薬が必要かを、治療内容や体の状態に応じて検討します。
発熱や息苦しさなどがある場合は、次の予約日を待たず、あらかじめ案内された連絡先へご相談ください。[4]
仕事や日常生活との両立を考える
疲れやすさ、手足のしびれ、通院の負担など、治療が暮らしに与える影響もお聞かせください。
働き方や休み方、ご家族の付き添い、費用や制度のことも、医師・看護師・薬剤師などと一緒に整理していきます。
地域の主治医や多職種と連携し、患者さんが大切にしている毎日を支えます。[5]
受診・ご紹介について
M蛋白などの異常を指摘され詳しい検査を勧められた方、骨髄腫と診断された方、再発後の治療や治験を相談したい方は、かかりつけ医・現在の主治医に当科への紹介をご相談ください。
これまでの検査結果や治療経過を共有いただき、必要な診療につなげます。
参考文献・参考資料
- van de Donk NWCJ, Pawlyn C, Yong KL. Multiple myeloma. Lancet. 2021;397(10272):410–427. DOI: 10.1016/S0140-6736(21)00135-5.
- Rajkumar SV. Multiple myeloma: 2024 update on diagnosis, risk-stratification, and management. Am J Hematol. 2024;99(9):1802–1824. DOI: 10.1002/ajh.27422.
- Rajkumar SV, Dimopoulos MA, Palumbo A, et al. International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma. Lancet Oncol. 2014;15(12):e538–e548. DOI: 10.1016/S1470-2045(14)70442-5.
- Dimopoulos MA, Terpos E, Boccadoro M, et al. EHA–EMN Evidence-Based Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up of patients with multiple myeloma. Nat Rev Clin Oncol. 2025;22:680–700. DOI: 10.1038/s41571-025-01041-x.
- 日本大学医学部附属板橋病院. 血液・腫瘍内科の公式診療案内.
- 日本大学医学部附属板橋病院. CAR-T療法・CAR-T専門外来について.
